2023年3月8日に開催された東京都 予算特別委員会(総括質疑)にて、川松 真一朗 都議と東京都 福祉保健局の議論(若年被害女性支援事業について)を要約してお届けします。
議論サマリー
川松 真一朗(都議)
若年被害女性等支援事業について。3月3日の定例記者会見にて、小池知事は「これは国からの委託事業です」と、まるで他人事のような答弁をされた。そもそも、本件の実施主体は東京都。国からの委託事業という発言は間違いと思うが、認識は合っているか?
川松 真一朗(都議)
ということは、知事の発言は間違いだったということ。住民監査請求も通るほど注目されている中、福祉保健局は知事にどう説明してきたのか疑問だ。監査の勧告を受けた相手方にはその尊重義務があるが、局はどうやって受け止めているのか?
福祉保健局(東京都)
「事業に必要な経費の実績額を再調査し、客観的に検証可能なものとすること」という勧告について、真摯に受け止め、局として調査をした
川松 真一朗(都議)
真摯に受け止めて調査した結果、対象団体の人件費が新たに1,300万かかっていたことが判明した。それを事業対象経費から外したというが、なぜ外したのか?
福祉保健局(東京都)
全ての賃金台帳と振込履歴を確認したところ、都事業に従事する職員給与は 2,247万9,000円だった。そのうち、台帳に記載があったのが 880万4,000円であったため、残り1,367万4,000円は「都事業の範囲外」として経費から除外した
川松 真一朗(都議)
では、都事業と団体側の事業は、やってることが別なのか?
福祉保健局(東京都)
都が委託している範囲は都の事業。自主事業というのもやっているが、そこは明確に会計を分けるよう私どもも指導した
川松 真一朗(都議)
その認識は、勧告を読み間違えている。監査委員会は「都が委託している部分について、団体がいくら使ったかを出せ」と言っている。本来、福祉保健局は2,600万を超えた経費分も全て出すべきだったのではないか。なぜそう考えなかったか?
福祉保健局(東京都)
この委託契約は2,600万円が上限。今回、監査事務局からは、「監査事務局で調査した 2,900万円について調査するように」と言われたのでチェックしたが、結果2,700万円だったので上限額まで支給した
川松 真一朗(都議)
今の局長の説明だと、「こっちは公金」「こっちは自主事業」と言って公金部分の備品を使っていたらおかしくならないか?
福祉保健局(東京都)
公金での備品購入費が計上されたものもあったが、都としては「自主事業に使わないように」と指導した
川松 真一朗(都議)
使わないように指導をしたかどうかでなく、今回の再調査の中で、そこまでチェックしたか?と聞いている
福祉保健局(東京都)
今回は監査側の依頼により、領収書や台帳など会計書の支出をチェックした
川松 真一朗(都議)
それだと勧告の求めた「客観的な検証」ができず、再調査として成立していない。一方、この間の本会議の質問で突然、「委託事業から補助事業に変えます」という話があった。国とも協議しているとの話だったが、どんな協議をしたのか?
福祉保健局(東京都)
事業開始から5年経って公的機関と団体の連携体制も成熟し、今後より多くの団体が活用できるスキームが必要になってきた。国からも2月に「令和5年度に補助事業として実施できるように要綱改正する」との回答があったので、補助事業化を決めた
川松 真一朗(都議)
話が食い違っている。「実施主体は、都道府県指定都市、中核市および一般市とする」「・・なお、委託等とすることができる」となっているが、いったい厚労省と何を調整する必要があり、どんな協議が必要だったのか?
福祉保健局(東京都)
令和5年度の「児童虐待 DV対策等 総合支援事業費」の交付要綱の中で、「若年被害女性支援事業についても交付対象となる」という改正を進めている
川松 真一朗(都議)
答弁が噛み合っていない。加藤厚労大臣は「現状でももう補助事業化できる」と言っており、「過大な経費計上があった」と認め、「対応が必要か検討する」とも述べた。監査勧告を受けた再調査結果について、厚生労働省に報告はしたのか?
福祉保健局(東京都)
厚生労働省には「必要経費の実績額 2,700万のうち、事業として不適切なものは無かった。認められなかった経費も192万あったが、これは会計処理上の誤り。それ以外は、領収書の一部の提示がなされなかったことで不適切かどうか確認できなかった」旨の情報提供をした
川松 真一朗(都議)
委託の金額についてはもう一度、厚生委員会でやってもらう。一方、「公法上の契約に類する契約」というフレーズを使って、前年に受託していた4団体がそのまま自動的に受託。かつ受託金額も大幅アップ。これが不透明だが、「公法上の契約に類する契約」とはどんな契約なのか?
福祉保健局(東京都)
国の定めた基準により、全国一律の内容で契約することを求められているため、地方自治法に基づき処理するもの。その4団体は外部有識者による受託事業者、評価委員会で審議し、「団体の強み・特徴を生かして支援を行っており、的確」と判断されたので随意契約とした
川松 真一朗(都議)
これは随意契約なのか?皆さん方がやられた契約には、随意契約の手続きに必要な「理由書」や「見積り計画書の添付」がない。要領に定められた「評価委員会」は実施中の事業評価が目的で、次年度の適確性を評価するものではない。目的外使用ではないか?
福祉保健局(東京都)
繰り返しの答弁になるが、令和3年度の履行状況等を審議し、評価委員会で的確と判断されている。令和4年度は、対象者との関係性の定着度など、事業の継続性を考慮して令和3年の4団体に継続委託した
川松 真一朗(都議)
それで福祉保健局の正当性は誰も理解できない。地方自治法に基づく随意契約ならば、そのプロセスをしっかり踏むべき。「この団体はちゃんとしてるから、来年もOKですよ」「金額もアップしますよ」が成立するなら、何でもありになる。他にもこうした事例があるのか?
福祉保健局(東京都)
本事業はアウトリーチで声かけした方などに対し、自立に向けて継続支援を行うという特性がある。そのため、外部有識者を入れた受託事業者・評価委員会で判断してきた
川松 真一朗(都議)
「前年度の契約でちゃんとやってくれたから、事業継続OK」。東京都は、このようなプロセスで随意契約を結ぶことをOKとしているのか?
副知事(東京都)
申し訳ないが、個別の詳細な状況まで把握していないので、正しいか正しくないか判断できる状況にない
川松 真一朗(都議)
4,500万円への予算増額について。予算付けをした根拠となる議事録やメモ、メールなど資料一式の提出を求めたが、出てきたのは「これまでの流れ」のみ。これが根拠資料なのか?福祉保健局の局内・部内・課内のいずれでも議論してこなかったのか?
福祉保健局(東京都)
倍増の根拠は、概算要求での「相談者や困難ケースの増加」「職員の研修機会確保のための代替職員の雇用」「居場所における生活支援員の増員、警備体制の確保」による。部内で検討の上、局内で検討して財務局へ説明し、予算措置が認められた
川松 真一朗(都議)
その「局内の検討」の議事録や記録を出してほしいと私はお願いした。メモの類いでも良いと。それさえも残っておらず、口頭の世間話みたいなもので決めてしまったのか?
福祉保健局(東京都)
繰り返しの答弁になるが、令和2・3年度の実績や受託団体からのヒアリング、国の概算要求の増額等を踏まえ、部内・局内での検討を経て財務局へ説明した
川松 真一朗(都議)
独自ルールで団体を選び、内輪の話で予算増額を決めたと言わざるを得ない。次に、アウトリーチについて。団体によって「学校関係機関へ6,373枚のリーフレット送付」「夜間の巡回バスを出して声掛け3,000人」と取組みが異なるのに予算は同額。理解ができないが、こんなアバウトで良いのか?
福祉保健局(東京都)
支援対象者の状況、団体の活動方法や活動場所も異なる中、各団体がそれぞれの強みを活かしながら実施している。四半期ごとに相談件数、 居場所の提供人数や事業実績額など、報告書で履行状況も確認している
川松 真一朗(都議)
これは契約のあり方以前の問題。事業内容をチェック・管理すべき福祉保健局側が変わらなければ、登場人物が同じなのに委託から補助に変わっても何も変わらない。あらためて福祉保険局内の仕事のあり方、チェックの仕方を先に見直すべきと思うが、見解はいかがか?
福祉保健局(東京都)
繰り返しの答弁になるが、本事業の効果を一層高めるためには、より多くの団体が活用できるスキームが必要。都は一律の枠組みを示すのでなく、団体の活動を一定の基準に基づき、補助事業として支援する。補助対象となる全団体の事業実績についてはあらためて精査する
川松 真一朗(都議)
「繰り返しになるが」と言うが、私は同じ質問はしていない。監査勧告の「1人1回当たり上限金額を設ける」「宿泊は、その人数や目的・宿泊数などを報告させる」等もすっ飛ばし、「補助事業にします」とはおかしい。真摯に勧告を受け止めて調査した結果、事業内容は変えないのか?
福祉保健局(東京都)
勧告を真摯に受け止め、調査した。その勧告内容も踏まえ、来年度に補助事業化することにした
川松 真一朗(都議)
若年被害女性の支援そのものに私は反対はしていない。公金を使って事業をやるなら、しっかり管理して透明性を担保すべきということ。では、今回の再調査の結果を受けて、補助事業者の公募など、具体的な執行はまだ行わないという理解でよいか?
福祉保健局(東京都)
来年度については現在、補助要綱などの準備を進めている
川松 真一朗(都議)
先ほど「補助事業にすればより幅広い団体にもお願いできる」と言われたが、それはありだと思う。特定地域に限定せず、多くの方々に向けて支援をする。それなら最初からそうすれば良かったと思うが、もっと透明性を持って団体を選考するという答弁はできないのか?
福祉保健局(東京都)
規模に関わらず、さまざまな団体のノウハウを活用できるよう国と協議する。事業の公平・公益性、信頼性を担保するために、対象事業者の要件や補助対象基準額などを厳格に設定する
川松 真一朗(都議)
「補助事業者」の透明性を求めているんじゃない。「福祉保健局」の透明性を求めている。他の局がしっかり踏んでいる手続きをせず、予算増額を決めた公的な記録もない。これを繰り返していたら、相手方の透明性を担保してもまた問題になる。自局を律することはできないのか?
福祉保健局(東京都)
法律・規則に基づいて事業を実施するのは当然のことと考える。引き続き、真摯に事業を進めてまいりたい
川松 真一朗(都議)
法律・規則という言葉が出たので、次の各委員会でも調査させていただく。局内の動き、国との協議、知事への説明。全てが杜撰としか言いようがない。これまでの局内の体制や常識・前例などを見直し、ゼロベースで事業のあり方、事業者選定を行ってほしいと考えるが、局長の決意を教えてほしい
福祉保健局(東京都)
補助事業化にあたっては、事業の公益性・信頼性を担保できるよう、対象者の要件や補助対象経費・補助金額を厳格に設定する。補助申請があった事業者については、要項に照らしながら個別に判断していきたいと思う
川松 真一朗(都議)
税金は納めていただいた皆さんのもので、納税者に納得される使い方をすべき。監査委員会の勧告で出された指示も、その一部しか措置していない。全ての措置を行うことでこの事業は透明性が担保され、委託から補助に変わっても信頼される福祉保健局になると思う。自分たちが正しかったのか?そのプロセスは正しいのかを議論していただき、次年度の事業に取り組んでほしい
映像ソース
東京都 予算特別委員会(総括質疑)2023年3月8日登壇者の紹介