2023/01/15

【発言録 要約】日本社会党(石橋 政嗣)VS 自民党(田中 角栄)1972/11/2 ~日中国交正常化





1972年11月2日に開催された衆議院予算委員会での、日本社会党の石橋政嗣議員と自由民主党の田中角栄 元総理国会答弁を要約してお届けします。

時代背景としては、先にアメリカのニクソン大統領が訪中し、中華人民共和国が常任理事国の地位を得た時代。日本も経済界やスポーツ界など、官民の地道な国際交流を実らせた末に日中国交正常化が実現しました。

本予算委員会では、日米安保条約自衛隊の軍備増強などが日中友好に及ぼす影響について激論が交わされています。









議論サマリー
石橋 政嗣(日本社会党)
去る 9月29日、日中の国交回復を告げる共同声明が採択された。わが党としても心から歓迎する。国論はほぼ統一され、総理は超党派的な支持を得て外交できるという非常に恵まれた立場に立つが、これからは何をするおつもりか?
田中 角栄(自由民主党)
野党の皆さんから理解と声援をいただきながら日中国交の正常化に踏み切ったことは、歴史的にも意義のあること。政府も、国民の皆さま、野党の皆さんのご意見も十分聞きながら、これからも国民的外交を推進していきたい
石橋 政嗣(日本社会党)
喜ばしいことだが、日中国交正常化が直ちに両国の友好関係の確立、アジアの緊張緩和にそのまま繋がるのか?最近の政府の言動から危惧している。「日米安保条約を堅持する」と日本政府はアメリカ政府に確約したのか?
田中 角栄(自由民主党)
本会議でも申し上げた通り。日米安保条約は維持し、堅持していく
石橋 政嗣(日本社会党)
中国の内政に干渉する条項(米軍の日本駐留、在日米軍の守備範囲に台湾を含む)をそのままにして、今後の日中友好関係に何の支障もないと思っておられるのか?
田中 角栄(自由民主党)
アメリカはすでに、私の訪中前にニクソン大統領が北京訪問しているし、両国は意思疎通がはかれる状態。日米安保があることは中国も承知済み。それよりも、善隣友好を推し進める日中の意思と努力が必要
石橋 政嗣(日本社会党)
共同声明で、中国政府は中日友好のために日本への戦争賠償を放棄した。非常に感謝にたえないが、日本も「ああ よかったよかった」だけでは済まないのでは?
田中 角栄(自由民主党)
周恩来総理の「これから賠償請求すると日本国民が大変な負担を被ることになる」との配慮には感謝。こうした好意には好意で報いなければならない
石橋 政嗣(日本社会党)
関連して聞くが、日米安保条約の堅持ベトナム戦争への協力第4次防衛力整備計画(=自衛隊の軍備計画、「4次防」)が、どうして日中友好の確立・アジアの平和と安定につながるのか?
田中 角栄(自由民主党)
日本は平和憲法を守っているし、侵略などは絶対にやらない。4次防も、憲法の定める専守防衛という最小限のもので、脅威を与えるものではない
石橋 政嗣(日本社会党)
さっぱり分からない。総理は所信表明で「世界では話し合いによる緊張緩和が始まっている」と述べつつ、「米国との安保体制を堅持しつつ、自衛上最小限度の防衛力が必要」と述べた。言ってることとやってることが結びつかない
田中 角栄(自由民主党)
もう春が来るからといって、まだ春が来ないうちに着物を脱ぐわけにはいかない。政府とは、少しぐらい暑くとも、本当にもう風邪を引かない自信を持つまで防衛に責任を持たねばならない。今、日米安保を無くしていい状態にはない
石橋 政嗣(日本社会党)
春とは、どういう時点になったら春なのか?そういう状態になったら軍事力増強はストップするのか?まさか、「まだ春じゃない、まだ春じゃない」と言って、なおかつ重ね着したりはしないか?
田中 角栄(自由民主党)
確実に自分たちの独立、生命、財産を確保できる状態を指すと思うが、第二次大戦後に核兵器が発明されてしまった。第三次大戦で核戦争になれば、全人類が死滅して元も子もなくなる
石橋 政嗣(日本社会党)
国民が再び戦争の惨禍を被るかどうか、そういう危険性を常に持っているのが政府。憲法上、攻撃的な兵器の保有は認められない。次に移るが、FS-T2改(新規導入予定の戦闘機)はどういうものか?精緻な爆撃能力を持っているのでは?
田中 角栄(自由民主党)
侵略兵器を持てないのは当然で、少なくとも渡洋爆撃を行なうものであってはならない。FS-T2改は行動半径300海里、往復275キロであり、距離的に敵基地攻撃が目的でないことは明らか。そして、爆撃能力は近海で侵略を受けた場合などに防御目的で必要
石橋 政嗣(日本社会党)
これは憲法に反するか合憲かという重大な問題。このように大きな食い違いが正されない以上、私は質問を続けることは出来ない


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