2023年1月23日、第211回の国会召集(参議院・衆議院)が行われました。翌年度にあたる『2023年度予算』の年度内成立を目指し、当初予定の27日から前倒しての開催となりました。
まず、本国会において設置された特別委員会は下記の通りです。
衆議院 | 参議院 | |
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特別委員会 | ・災害対策特別委員会 ・拉致問題特別委員会 ・消費者問題特別委員会 ・倫理選挙特別委員会 ・地域活性化、こども政策、デジタル社会形成に関する特別委員会 ・沖縄北方特別委員会 ・震災復興特別委員会 ・原子力問題調査特別委員会 |
・災害対策特別委員会 ・北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会 ・消費者問題に関する特別委員会 ・政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会 ・地方創生及びデジタル社会の形成等に関する特別委員会 ・政府開発援助等及び沖縄、北方問題に関する特別委員会 ・東日本大震災復興特別委員会 |
当日は岸田内閣総理大臣の施政方針演説をはじめ、各国務大臣からの所信表明が行われました。
その内容を下記に要約してお届けします。
施政方針演説(内閣総理大臣)
岸田 文雄(内閣総理大臣)
『検討・決断・議論』に等しく全力で取り組み、信頼と共感の政治を進めていく
『防衛予算』を5年間で43兆円確保し、「反撃能力の保有」「南西地域の防衛体制の抜本強化」「サイバー・宇宙対応」を進める
『新しい資本主義』として、まずは物価上昇を超える賃上げを持続的なものにする。そのため、年齢や性別を問わず長期目線での学び直しを支援し、企業の生産性を向上させる
『異次元の少子化対策』のため、予算を倍増。まずは全国各地の当事者の声を徹底的に聞き、対応内容を具体化する。こども・子育て政策は先送りしない
『包摂的な経済社会』を作るため「女性・若者・地方」の力を引き出していく。女性登用の一層の拡大、若者世代の負担増の抑制、地方の観光産業支援、高速道路や施設、デジタルインフラを整備する
『新型コロナ』については、第8波を乗り超えた後、今春を目途に「5類感染症」へ引き下げるべく議論する。マスクの着用もこれと併せて整理する
ロシアによるウクライナ侵略という、力による一方的な現状変更の試みは許さない。被爆地広島で開かれるサミットの機会を捉え、日本国として国際秩序を守る強い意志を発信していく
所信表明演説(外務大臣)
林 芳正(外務大臣)
外交政策の所信を述べる。日本はいかなる地域においても、力による一方的な現状変更の試みを許さない。唯一の戦争被爆国として、核の威嚇は断じて受け入れられず、また核の使用もあってはならない
日本は、戦後最も厳しい安全保障環境に直面している。「防衛力の抜本的強化」に裏打ちされた力強い外交を展開し、危機を未然に防ぎ、平和で安定した国際環境を能動的に創る
『中国』とは、尖閣諸島を含む海域での一方的な現状変更の試み、台湾周辺での一連の軍事活動など懸案がある。主張すべきは主張し、対話をしっかり重ね、共通の諸課題には協力していく
『韓国』は、北朝鮮への対応など様々な国際課題で協力していくべき重要な隣国。国交正常化の日から築いてきた友好関係を健全な状態に戻し、発展させていく。竹島は、歴史的かつ国際法上も日本固有の領土
『ロシア』とは、ウクライナ侵略のせいで平和条約交渉の展望を語れる状況にはない。しかし、日本として北方領土問題を解決し、平和条約を締結するとの方針は堅持する
『北朝鮮』とは、拉致・核ミサイルなどの諸懸案を解決し、日朝国交正常化の実現を目指す。最重要課題の拉致問題解決のため、全ての拉致被害者の1日も早い帰国を実現すべく全力で取り組む
所信表明演説(財務大臣)
鈴木 俊一(財務大臣)
財政政策の所信を述べる。日本経済は緩やかに持ち直した一方、エネルギー・食糧価格の高騰など、世界環境は悪化。これに対応するため、『令和5年度予算』と『税制改正』を着実に実行する必要がある
『令和5年度予算』は、コロナ対策・原油価格高騰予備費に4兆円、ウクライナ緊急対応予備費に1兆円を確保。主な経費としては、出産子育て支援、中小企業対策、東日本大震災の復興などを盛り込んだ
また、「防衛関係費」ではスタンドオフ防衛能力(射程圏外からの攻撃能力)、統合防空ミサイル防衛能力(ミサイル迎撃など)を中心に防衛力を抜本的に強化・維持できる財源を確保する
『税制改正』は、家計の資産を「貯蓄から投資へ」積極的に振り向け、資産所得倍増に繋げる。そのため、NISAの抜本的拡充・恒久化などを行う一方、スタートアップ支援のための税制措置を講じる
所信表明演説(経済財政 政策担当大臣)
後藤 茂之(経済財政 政策担当大臣)
経済の現状と課題、政策運営の所信を述べる。日本はウィズコロナのもとで緩やかな景気回復中だが、世界経済が下振れリスクに直面。そこに先手を打つため、総合経済対策の進捗管理を徹底し、迅速かつ着実に実行する
賃上げに取り組む中小企業等への支援を大幅に拡充し、価格転嫁(物価上昇)対策を強化する。また、人や成長分野への大胆な投資拡大などにより、来年度の日本経済は実質 1.5%程度、名目で 2.1% 程度の成長を見込む
経済再生のカギを握るのは『構造的な賃上げ』。①リスキリング(職業能力の再開発、再教育)による能力向上支援、②「日本型職務給(年功給でなく、仕事内容やスキルで賃金を決定)」の確立、③成長分野への円滑な労働移動の、三位一体改革を加速する
わが国の成長力の強化や国民所得増加に繋げるため、海外からの人材や資金の呼び込みに積極的に取り組む。今年は平時の生活を全面的に取り戻せるよう、足元の感染状況に十分注意しながら、さらなる取り組みを進める
映像ソース
通常国会召集(2023/01/23)防衛費増額のための増税論議が焦点の一つとなっていましたが、今回の施政方針演説の中には同ワードが一度も登場しませんでした。
これに関して、今国会では消費税や所得税をはじめとした「増税」による国民負担の要否、妥当性について与野党の厳しい追及や質疑が予想されます。
登壇者の紹介